
低濃度アトロピン点眼薬は、現在もっとも広く使われている近視抑制治療のひとつです。 点眼するだけで始められる手軽さから、最初の選択肢として検討されることが多い方法です。 このページでは、その仕組みと効果のエビデンス、注意点を整理します。
日本では、2025年以降、「リジュセアミニ」(0.025%アトロピン)が主に処方されています。
対象年齢・費用の目安
- 方法
- 1日1回、就寝前に点眼する
- 対象年齢
- おおむね6〜15歳ごろ(近視が進行しやすい学童期が中心)。開始の判断は眼科医が行います。
- 費用の目安
- 1箱 約4,000〜5,000円程度(およそ1か月分)+ 定期検査代。月あたり数千円程度から。
- 通院
- 数か月ごとに受診し、度数・眼軸長の変化を確認します。
※ 上記は自由診療(保険適用外)の概算です。費用・対象は施設や時期によって異なります。 実際の金額・適応は受診先の医療機関にご確認ください。
アトロピンとはどんな薬?
アトロピンは、もともと瞳孔を広げたり、目のピント調節をやすませたりする目的で 眼科で古くから使われてきた薬です。高濃度(1%など)では強い効果がある一方、 まぶしさや手元の見えにくさといった副作用が大きく、日常的に使い続けるには不向きでした。
そこで、ごく薄い濃度(0.01%〜0.05%程度)に薄めて点眼することで、副作用をおさえつつ近視の進行を抑えるという使い方が広まりました。 これが「低濃度アトロピン点眼」です。日本では2025年に0.025%製剤 (リジュセアミニ)が保険外(自由診療)の薬として登場し、注目されています。
なぜ近視の進行を抑えられるの?
子どもの近視の多くは、眼球が前後に長くのびる(眼軸長がのびる)ことで進行します。 低濃度アトロピンは、この眼軸長ののびをゆるやかにする働きが あると考えられています。くわしい作用の仕組みはまだ完全には解明されていませんが、 ピント調節をやすませる効果だけではなく、眼球の壁(強膜)に直接はたらきかける 可能性も研究されています。
効果はどのくらい?(LAMP研究)
低濃度アトロピンの効果を調べた代表的な研究に、香港で行われたLAMP研究(Low-concentration Atropine for Myopia Progression)があります。0.05%・0.025%・0.01%の3つの濃度とプラセボ(薬の入っていない点眼)を 比較した大規模な臨床試験です。
- いずれの濃度でも、点眼しないグループに比べて近視の進行と眼軸長ののびが ゆるやかになった
- 濃度が高いほど抑制効果は大きい傾向があり、0.05%がもっとも効果的だった
- 一方で、濃度が高いほどまぶしさや手元の見えにくさは出やすくなる
つまり、効果と副作用のバランスを見ながら濃度を選ぶことが大切です。 効果の感じ方や進行の度合いには大きな個人差があり、すべての子どもに同じように 効くわけではない点にも注意が必要です。
副作用と注意点
- まぶしさ:瞳孔がわずかに広がることで、明るい場所でまぶしく 感じることがあります。
- 手元の見えにくさ:ピント調節がややしにくくなり、近くが 見えづらく感じることがあります。低濃度では比較的軽度とされています。
- リバウンド:治療をやめたあとに進行がやや戻る可能性が 指摘されており、やめ方は眼科医と相談しながら決めます。
- まれにアレルギーや目の刺激感が出ることがあります。
点眼は通常、就寝前に1日1回行います。効果が出ているかは数か月〜年単位で 眼軸長や度数を測りながら確認していきます。
どんな子どもに向いている?
点眼だけで始められるため、コンタクトレンズの装用がまだ難しい年齢のお子さまや、 まずは負担の少ない方法から試したいご家庭に向いています。ただし、近視の程度や 進行の速さ、生活スタイルによって適した治療は異なります。実際に始めるかどうかは 眼科医の診察のうえで判断してください。
ほかの治療法とあわせて知りたい方は治療についての総合ページや、オルソケラトロジーの解説もご覧ください。お子さまの数値を入力して進行の目安を試算したい場合は予測ツールをご利用ください。
参考文献
- Yam JC, et al. Two-Year Clinical Trial of the Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP Study). Ophthalmology. 2020.
- Yam JC, et al. Three-Year Clinical Trial of Low-Concentration Atropine for Myopia Progression. Ophthalmology. 2022.