
眼軸長とは、角膜の表面から網膜までの、眼球の前後方向の長さ (目の奥行き)のことです。子どもの近視の多くは、成長とともに この眼軸長がのびすぎることで起こります。 つまり近視の本質は「眼球が長くなる変化」であり、眼軸長は 近視管理のうえでとても重要な指標です。
視力検査だけでは不十分なの?
視力検査やメガネの度数は大切ですが、これらは「今どれくらい見えにくいか」 を表すもので、近視の本質である眼軸長ののびを直接は教えてくれません。 たとえば、その日の体調や調節(ピント合わせの力み)によって度数は 変動することがあります。一方、眼軸長はより直接的・客観的に近視の進行をとらえられるため、 国際的な近視管理のガイドラインでも重要な評価項目とされています。
なぜ眼軸長が大切なの?
眼軸長がのびて近視が強くなる(強度近視になる)と、将来的に網膜剥離・近視性黄斑症・緑内障などの目の病気のリスクが高まることが知られています。 ある研究(Tideman 2016)では、眼軸長が長いほど、 将来見えにくさが残るリスクが高くなる関係が示されています。 だからこそ、子どものうちに眼軸長ののびをできるだけゆるやかにする ことが、近視抑制治療の目標になります。
どうやって測るの?
近年は光学式眼軸長測定という方法が主流です。 小さな光を十数秒間見ているだけで、目に触れることなく、 短時間で安全に、精度の高い測定ができます。痛みはありません。 眼軸長は一度測って終わりではなく、定期的に測って「のびのスピード」を追うことに意味があります。 治療の効果が出ているかどうかも、眼軸長の変化で確認できます。
年齢ごとの「眼軸の伸び」の目安
眼軸長は子どもの成長とともに自然にのびますが、近視眼は正視眼よりのびが速く、また年齢が低いほどのびが大きいことが報告されています。 治療をしていない場合の「自然な年間ののび」の目安として、シンガポールの 大規模追跡研究(SCORM study)では、次のような値が示されています (集団の平均値であり、個人差があります)。
| 年齢 | 近視眼(mm/年) | 正視眼(mm/年) |
|---|---|---|
| 8歳 | 0.39 | 0.14 |
| 9歳 | 0.31 | 0.11 |
| 10歳 | 0.25 | 0.09 |
| 11歳 | 0.20 | 0.08 |
| 12歳 | 0.17 | 0.06 |
| 13歳 | 0.14 | 0.06 |
| 14歳 | 0.12 | 0.05 |
出典: SCORM study(シンガポールの近視リスク因子コホート研究)。近視眼は同じ 年齢でも正視眼よりのびが大きいことがわかります。
日本人の近視の子どもを対象にした研究(Itoi 2021・482例)でも、 若い年齢ほど年間の眼軸ののびが大きいことが示されています。
| 年齢 | 近視眼の年間眼軸伸長(mm/年) |
|---|---|
| 7〜9歳 | 0.47 |
| 10〜12歳 | 0.32 |
| 13〜15歳 | 0.18 |
| 16〜18歳 | 0.09 |
出典: Itoi 2021(日本人近視 482例)。日本人のデータでも、年齢が上がるほど のびがゆるやかになる傾向が見られます。
治療効果はどう判定するの?
近視抑制治療では、上のような「治療しない場合の自然なのび」を基準に、 実際の眼軸ののびがそれを十分に下回っているかで効果を 確認していきます。一つの目安として、次のような値が用いられることがあります (あくまで目安で、判定は眼科が総合的に行います)。
- 7〜9歳ごろ:年 0.20〜0.30 mm 以下
- 10歳以上:年 0.20 mm 以下
- 18歳ごろ:年 0.10 mm 以下
注意したいのは、光学的な近視治療は「過剰なのび」を抑えるもので、 正視眼でも見られる生理的なのびは残るという点です。 効果には個人差があり、どの治療でも近視を完全に止められるわけではありません。 近視の進行は18歳ごろに落ち着くとされ、治療はそのころまで続けることが 望ましいとされますが、年齢や生活スタイルに応じて見直すこともあります。 判定は、眼軸長を定期的に測れる眼科で相談しながら行ってください。
まとめ
視力や度数に加えて眼軸長を定期的にチェックすることで、近視の進行を より正確にとらえられます。近視抑制治療を始める・続ける・見直す 判断の材料にもなります。お子さまの近視が気になる場合は、 眼軸長を測れる眼科での定期管理を検討してみてください。進行の目安は予測ツールでも試算できます。
参考文献
- Saw SM, Tong L, Chua WH, et al. Eye growth changes in myopic children in Singapore (SCORM study/近視眼・正視眼の年齢別 年間眼軸伸長量). British Journal of Ophthalmology. 2005. [リンク]
- Itoi M. Axial Length Elongation in Japanese Youth With Myopia. Eye & Contact Lens: Science & Clinical Practice. 2021;47(2)(日本人近視482例の年間眼軸伸長量). [リンク]
- Tideman JWL, Snabel MCC, Tedja MS, et al. Association of Axial Length With Risk of Uncorrectable Visual Impairment for Europeans With Myopia. JAMA Ophthalmology. 2016;134(12):1355-1363.
- 日本眼科学会 近視管理用眼鏡(多分割レンズ)ガイドライン(第1版) 日本眼科学会雑誌. 2025;129(8):855. [リンク]