
オルソケラトロジーは就寝中にハードコンタクトレンズを装用して角膜形状を一時的に変化させ、 日中を裸眼で過ごせるようにする治療です。近視進行抑制効果も報告されており 子どもへの処方が増えていますが、すべての人に適応があるわけではありません。 日本眼科学会・日本コンタクトレンズ学会のガイドラインで処方者の条件と 適応・禁忌が定められています。
適応となる屈折度数
日本眼科学会のガイドライン(第2版)では、標準的な適応範囲として近視 −1.00D〜−4.00D、乱視は直乱視で−1.50D以内、倒乱視で−0.75D以内とされています。 一部の高度近視(−6.00D程度まで)に対する使用も研究されていますが、 これは標準的なガイドラインの範囲外であり、十分な経験を持つ施設での慎重な判断が必要です。
- 軽度近視(−3.00D以下):適応になりやすい
- 中等度近視(−3.00D〜−6.00D):標準範囲の上限〜範囲外
- 強度近視(−6.00D超):通常は適応外
矯正前の最良矯正視力(BCVA)が1.0(0.8以上)あることも条件の一つとされています。
年齢の考え方
2017年改正のガイドラインでは年齢の絶対的な下限は設けていませんが、20歳未満は「慎重処方」と位置づけられています。
- 保護者の同意と監督のもとで装用・管理できることが前提
- レンズの着脱・洗浄・保管を適切に行える能力があること
- 定期検査に継続して通院できる環境があること
臨床では8歳ごろから処方されることもありますが、年齢よりも 「その子が責任をもってレンズを管理できるか」という点が重要とされています。
処方前に必要な検査
適応判断のために、以下の検査が必要です。
- 角膜形状解析(トポグラフィー): 円錐角膜や不正乱視の有無、角膜の対称性を確認する最重要検査
- 屈折検査:近視・乱視の度数(調節麻痺下での検査が望ましい)
- 涙液検査:涙液分泌量(シルマーテスト)・涙液安定性(TBUT)
- 眼圧測定:緑内障・高眼圧の除外
- 細隙灯顕微鏡検査:角膜・結膜・眼瞼の状態確認
- 眼底検査:網膜病変の有無
絶対禁忌
以下の状態では処方できません。
- 円錐角膜(ケラトコーナス): 角膜の形状が不規則に変化する進行性疾患。レンズ装用で悪化する恐れがある
- 重症ドライアイ: 涙液が極端に少なく、角膜上皮障害を引き起こしやすい
- 活動性の角膜感染症・炎症: 細菌・真菌・ウイルス性の角膜炎、前眼部ぶどう膜炎
- 著しい角膜不正乱視・瘢痕: 角膜形状が不規則で均一な矯正効果が得られない
- レンズ素材・保存液へのアレルギー
- 適切な眼瞼閉鎖が困難な状態(術後眼瞼異常など)
慎重処方(相対的禁忌)
以下は絶対禁忌ではありませんが、慎重な判断と十分な経過観察が必要です。
- 軽度〜中等度のドライアイ(ドライアイ治療と並行して検討することもある)
- 軽度のアレルギー性結膜炎
- レーシックなど屈折矯正手術後(術後最低6か月〜1年の安定を確認してから)
- コンプライアンス(毎晩装用・定期検査通院)が不確実な場合
装用スケジュールと効果の持続
効果を維持するには毎晩8時間以上の装用が基本です。 装用をやめると1〜2週間で近視が戻るとされています(一時的な矯正のため)。 近視の進行抑制効果については、ROMIO研究など複数の研究で報告されていますが、 効果には個人差があります。
処方後は1日後・1週間後・1か月後・3か月後を目安に定期検査を受け、 角膜の状態と矯正効果を確認します。処方できる医師の条件については別ページで解説しています。