子どもの近視ナビ

累進屈折力レンズ(PAL)と近視抑制

境目なく度数が変化する累進レンズの、近視進行抑制における効果と位置づけをわかりやすく解説します。

最終更新: 2026年6月

累進屈折力レンズ(PAL)のイメージ画像。

累進屈折力レンズ(PAL:Progressive Addition Lens)は、1枚のレンズの中で上から下へ度数がなめらかに変化する眼鏡レンズです。もともとは 老眼(遠近両用)に使われてきた設計で、子どもの近視進行を抑える目的でも研究されて きました。歴史の古い方法で、近年の近視抑制治療を理解するうえでの背景として 知っておくと役立ちます。

対象年齢・費用の目安

方法
度数が上下でなめらかに変化する眼鏡として装用する
対象年齢
学童期。ただし近視抑制を主目的に第一選択として勧められることは多くありません(下記参照)。
費用の目安
レンズ両眼で 約2〜5万円程度+フレーム代。単焦点眼鏡より高めです。
通院
度数の変化や見え方を定期的に確認します。

※ 上記は自由診療(保険適用外)の概算です。費用・対象は施設や時期によって異なります。 費用・適応は施設によって異なります。 実際の金額・適応は受診先の医療機関にご確認ください。

どんな仕組み?

近視が進む一因として、手元を見るときにピント合わせ(調節)の負担がかかることが 関係するという考え方があります。累進レンズは手元を見るときの調節の負担を軽くすることで、近視の進行を ゆるやかにできるのではないかと期待されてきました。

ただし、後述するように実際の抑制効果は小さく、DIMS眼鏡レンズのように網膜周辺の光の結び方(近視性デフォーカス)を積極的に利用する新しい設計の レンズとは、ねらいも効果も異なります。

近視抑制の効果は?(COMET研究)

累進レンズの近視抑制効果を調べた代表的な研究に、米国で行われたCOMET研究(Gwiazdaら, 2003年)があります。6〜11歳の近視の 子ども469名を、累進レンズと単焦点眼鏡のグループに分けて3年間比較しました。

その結果、累進レンズのグループは単焦点眼鏡のグループより近視の進行が3年間で約0.20ディオプター、眼軸長で約0.11mmゆるやかでした。 統計的には差がありましたが、その差はごくわずかで、臨床的に大きな意味の ある効果とはいえないと評価されています。効果は主に最初の1年に見られました。

現在の位置づけ

以上から、累進レンズは「近視抑制のための第一選択」としては積極的に勧められない、 というのが一般的な評価です。現在は、より効果が報告されているDIMS眼鏡レンズオルソケラトロジー低濃度アトロピン点眼などが中心的な選択肢になっています。ただし、調節の負担が大きいなど一部のお子さま では役立つ可能性も指摘されており、判断は眼科で相談してください。

ほかの治療法との比較は治療についてのページで紹介しています。お子さまの数値で進行の目安を試算したい場合は予測ツールをご利用ください。

参考文献

  1. Gwiazda J, et al. A Randomized Clinical Trial of Progressive Addition Lenses versus Single Vision Lenses on the Progression of Myopia in Children (COMET). Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2003;44(4):1492-1500.

実際の近視進行には大きな個人差があります。本ページは一般的な情報提供であり、 診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は眼科を受診してください。