EDOF(イードフ)は Extended Depth of Focus(焦点深度拡張) の 略で、ピントが合う範囲(焦点深度)を前後に広げるように設計されたレンズの技術です。 この設計を応用したソフトコンタクトレンズが、子どもの近視進行を抑える方法のひとつ として研究・実用化されています。日本のメーカーを含め複数の製品があります。
対象年齢・費用の目安
- 方法
- 日中、ソフトコンタクトレンズとして装用する(1日使い捨てタイプが中心)
- 対象年齢
- レンズの取り扱い・衛生管理ができる学童期以降が目安。適応は施設が判断します。
- 費用の目安
- 1日使い捨ての場合、両眼で年 約6〜12万円程度+検査代。製品・施設により幅があります。
- 通院
- 装用開始後と、その後も定期的に目とレンズの状態を確認します。
※ 上記は自由診療(保険適用外)の概算です。費用・対象は施設や時期によって異なります。 ソフトコンタクトのため、衛生管理を続けられることが前提です。 実際の金額・適応は受診先の医療機関にご確認ください。
どんな仕組み?
ふつうのレンズは1点にピントを合わせますが、EDOFレンズはレンズ内に複数の度数を なめらかに組み合わせ、ピントの合う範囲を奥行き方向に広げる設計に なっています。これにより遠くも手元も見えやすくなると同時に、網膜の周辺部に近視性デフォーカス(網膜の手前で光が結ばれる状態)を作り出します。
網膜の手前で光が結ばれる状態が、眼軸長(眼球の奥行き)ののびをゆるやかにすると 考えられており、これはDIMS眼鏡レンズやオルソケラトロジーと共通する考え方です。
近視抑制の効果は?(SEED LVPEI研究など)
EDOFコンタクトレンズを調べたランダム化比較試験のひとつに、インドで行われた SEED LVPEI研究(Manoharanら, 2024年)があります。7〜15歳の近視の子どもを対象に、 EDOFレンズとふつうの単焦点眼鏡を比較したところ、EDOFレンズを使ったグループでは近視の進行が約59%、眼軸長ののびが約49%ゆるやかだったと報告されて います。
一方で、別のEDOFレンズの1年間の試験(Sankaridurgら, 2022年)では効果が小さめに とどまるなど、製品や研究によって効果の大きさにはばらつきがあります。 EDOFは比較的新しい選択肢で、オルソケラトロジーや低濃度アトロピンに比べると エビデンスはまだ積み重ねの途中という位置づけです。
日本で使えるEDOFコンタクトレンズは?(SEED 1dayPure EDOF)
日本で入手できるEDOF(焦点深度拡張)設計のソフトコンタクトレンズとしては、 国内メーカーのシード(SEED)の「1dayPure EDOF(ワンデーピュア イードフ)」が代表的です。1日使い捨てタイプで、国内生産されています。EDOFを採り入れた コンタクトレンズとして日本で初めて承認・製品化されたとされています。
ここで大切な注意点があります。この製品が国内で承認されているのは「遠近両用(老視用)」としての用途であり(販売名「シード1dayPureUP」、医療機器承認番号 22100BZX00759000)、子どもの近視進行抑制を目的とした使用は、現時点では承認の範囲外(適応外使用)とされています。近視抑制目的で用いる場合は、医師の判断のもとで自由診療として 行われるのが一般的です。先ほどのSEED LVPEI研究(Manoharanら, 2024年)で 用いられたのも、このシードのEDOFレンズです。
なお、子どもの近視進行抑制を目的として日本で正式に承認されたソフトコンタクト レンズは、2025年に承認されたマイサイト ワンデー(MiSight 1day)があります。こちらはEDOFではなく「二重焦点(デュアルフォーカス)」という別の 設計ですが、近視抑制を目的とする場合の選択肢として比較・検討されることがあります。 どの方法が向いているかは、必ず近視抑制治療を扱う眼科でご相談ください。
メリット
- 日中は裸眼の感覚に近く、眼鏡をかけずに過ごせる
- 1日使い捨てタイプは衛生管理がしやすい
- 遠くも手元も見えやすい設計
- 装用をやめれば元に戻る(可逆的)
注意点・デメリット
- 衛生管理が重要:ソフトコンタクトのため、誤った使い方は 角膜の感染症などのリスクになります。
- 効果に個人差・製品差:研究によって抑制効果にばらつきがあります。
- エビデンスは発展途上:長期の効果・安全性のデータは、ほかの治療に 比べてまだ限られています。
- 自由診療で費用がかかり、金額は施設によって異なります。
どんな子どもに向いている?
眼鏡をかけたくない、スポーツをよくする、レンズの取り扱いと衛生管理を続けられる、 といったお子さまに向いています。コンタクトの管理が難しい場合はDIMS眼鏡レンズや低濃度アトロピン点眼も選択肢になります。適応の判断は、必ず近視抑制治療を扱う眼科で受けてください。
ほかの治療法との比較は治療についてのページで紹介しています。お子さまの数値で進行の目安を試算したい場合は予測ツールをご利用ください。
参考文献
- Manoharan MK, Verkicharla PK, et al. Randomised clinical trial of extended depth of focus lenses for controlling myopia progression: Outcomes from SEED LVPEI Indian Myopia Study. British Journal of Ophthalmology. 2024;108(9):1292-1298.
- Sankaridurg P, et al. Center-for-Near Extended-Depth-of-Focus Soft Contact Lens for Myopia Control in Children: 1-Year Results of a Randomized Controlled Trial. Ophthalmology and Therapy. 2022;11(4):1419-1431.
- シード株式会社 シード 1dayPure EDOF(イードフ)製品情報(販売名: シード1dayPureUP/医療機器承認番号 22100BZX00759000、遠近両用1日使い捨てソフトコンタクトレンズ) SEED 公式サイト.
- 日本オルソケラトロジーと特殊コンタクトレンズ研究会(SOS-J) 多焦点ソフトコンタクトレンズ(近視進行抑制治療について) SOS-J 一般向け情報.
- クーパービジョン・ジャパン株式会社 日本初、近視進行抑制治療を目的としたソフトコンタクトレンズ「マイサイト ワンデー」が厚生労働省の製造販売承認を取得 クーパービジョン ニュースリリース. 2025年8月.