子どもの近視ナビ

近視に関わる主な遺伝子(GJD2・RASGRF1ほか)

近視のゲノム解析で名前がよく挙がる遺伝子を、意味と限界がわかるようにやさしくまとめました。

最終更新: 2026年7月

DNAの二重らせんと眼のイラスト。近視に関わる遺伝子を表している。

近視は多くの遺伝子が少しずつ関わる「多因子遺伝」です。世界中のデータを集めたゲノムワイド関連解析(GWAS)で、 近視・屈折に関連する遺伝子の場所が数百か所見つかっています。ここでは代表的な遺伝子を、研究の流れにそって紹介します。

⚠ 以下の遺伝子は「そのタイプを持つ人で近視がやや多い」という集団レベルの関連を示すもので、1つ持っているから近視になる/ならないと決まるものではありません。

最初に見つかった代表格:GJD2 と RASGRF1

2010年、一般集団のGWASで最初に近視との関連が確認されたのがGJD2(15q14)RASGRF1(15q25)です。

  • GJD2:網膜に多いタンパク質「コネキシン36」をつくる遺伝子。 神経のつなぎ目(ギャップ結合)に関わります(Solouki ら 2010)。 その後の多くの研究でも繰り返し近視との関連が報告される、いわば「本命」の遺伝子です。
  • RASGRF1:網膜の機能や視覚の情報処理に関わるとされる遺伝子 (Hysi ら 2010)。

大規模研究で広がった「近視の地図」

その後、国際コンソーシアム(CREAM)や遺伝子解析企業(23andMe)のデータで、 関連する遺伝子座が一気に増えました。

  • Verhoeven ら 2013(CREAM):KCNQ5(イオン輸送)、RDH5(ビタミンA代謝)、 LAMA2・BMP2(組織の土台=細胞外マトリックス)、SIX6・PRSS56(眼の発生)など、 多様な働きの遺伝子が浮かびました。
  • Kiefer ら 2013(23andMe):近視になった「年齢」を手がかりに解析し、 細胞外マトリックス・視覚サイクル・神経発生の関与を指摘しました。
  • Tedja ら 2018(CREAM)161か所に増え、 「網膜から強膜へ伝わる光応答のシグナル」が近視の駆動役として注目されました。
  • Hysi ら 2020:約54万人の解析で336か所に。 概日リズム(体内時計)や色素に関わる遺伝子の関与も示唆されました。

日本人での確認

これらの多くは日本人でも確認されています。長浜スタディ(日本人の大規模コホート)を用いた Yoshikawa ら(2014)の研究では、GWASで見つかった近視関連遺伝子の関連が 日本人集団でも再現されました。ZC3H11B・GJD2・RASGRF1 などは、日本の遺伝子検査 (近視の遺伝子検査)でも項目に採用されています。

家族性の「強度近視」で見つかる遺伝子

以上の多因子近視とは別に、家族内で強い近視が受け継がれる「遺伝性の強度近視」では、影響の大きい単一の遺伝子変異が原因になっていることがあります(全体では少数)。

  • ZNF644:常染色体優性の強度近視の原因遺伝子として報告(Shi ら 2011)。
  • LRPAP1・CTSH・LEPREL1・SLC39A5・SCO2 など:早発の強度近視の家系の 解析(エクソーム解析)で見つかった原因遺伝子(Jiang ら 2015)。

こうした遺伝性強度近視が疑われる場合(幼少期からの強い近視、家族に強度近視が多いなど)は、強度近視の合併症の観点からも、 眼科での定期的な確認がすすめられます。

覚えておきたいポイント

  • 近視は多くの遺伝子が少しずつ関わる(1遺伝子で決まらない)
  • GJD2・RASGRF1 は繰り返し確認される代表的な遺伝子
  • 関連は「集団での傾向」で、個人の運命を決めるものではない
  • 遺伝子の影響は、屋外活動や近業など生活環境と組み合わさって現れる

遺伝子検査で近視リスクがどこまでわかるかは遺伝子検査で子どもの近視リスクはわかる?で解説しています。

参考文献

  1. Solouki AM, et al. A genome-wide association study identifies a susceptibility locus for refractive errors and myopia at 15q14 (GJD2). Nature Genetics. 2010;42(10):897-901. 原著リンク
  2. Hysi PG, et al. A genome-wide association study for myopia and refractive error identifies a susceptibility locus at 15q25 (RASGRF1). Nature Genetics. 2010;42(10):902-905. 原著リンク
  3. Verhoeven VJM, et al. (CREAM Consortium) Genome-wide meta-analyses of multiancestry cohorts identify multiple new susceptibility loci for refractive error and myopia. Nature Genetics. 2013;45(3):314-318. 原著リンク
  4. Kiefer AK, et al. Genome-wide analysis points to roles for extracellular matrix remodeling, the visual cycle, and neuronal development in myopia. PLoS Genetics. 2013;9(2):e1003299. 原著リンク
  5. Tedja MS, et al. (CREAM Consortium) Genome-wide association meta-analysis highlights light-induced signaling as a driver for refractive error (161 loci). Nature Genetics. 2018;50(6):834-848. 原著リンク
  6. Hysi PG, et al. Meta-analysis of 542,934 subjects of European ancestry identifies new genes and mechanisms predisposing to refractive error and myopia (336 loci). Nature Genetics. 2020;52(4):401-407. 原著リンク
  7. Yoshikawa M, et al. Comprehensive replication of the relationship between myopia-related genes and refractive errors in a large Japanese cohort (Nagahama Study). Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2014;55(11):7343-7354. 原著リンク
  8. Shi Y, et al. Exome sequencing identifies ZNF644 mutations in high myopia. PLoS Genetics. 2011;7(6):e1002084. 原著リンク
  9. Jiang D, et al. Detection of mutations in LRPAP1, CTSH, LEPREL1, ZNF644, SLC39A5, and SCO2 in 298 families with early-onset high myopia by exome sequencing. Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2015;56(1):339-345. 原著リンク

実際の近視進行には大きな個人差があります。本ページは一般的な情報提供であり、 診断・治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は眼科を受診してください。