
近視の度数分類(等価球面度数 SE)
| 分類 | 等価球面度数(SE)の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 正視 | −0.50D 未満(プラス側含む) | 近視なし |
| 軽度近視 | −0.50D 〜 −3.00D 未満 | |
| 中等度近視 | −3.00D 〜 −6.00D 未満 | |
| 強度近視 | −6.00D 以下 | 合併症リスクが高まる |
| 超強度近視 (病的近視) | −8.00D 以下(または眼軸長≥26.5mm+眼底変化) | 合併症リスクがさらに高まる |
※ 等価球面度数(SE)= 球面度数 + 乱視度数 ÷ 2。分類は文献・機関によって若干異なります。
強度近視では、眼球の前後径(眼軸長)がのびることで網膜が引き伸ばされ、 中心部の網膜(黄斑)にさまざまな変化が生じることがあります。 これをまとめて近視性黄斑症(myopic maculopathy)と呼びます。 日本では失明原因の第4位とされており、特に働き盛りの年代での視力障害に関連するとされています。
黄斑とはどこ?
黄斑(おうはん)は網膜の中心にある直径約5mmの領域で、 ものを見るときにもっとも重要な部分です。 文字を読む・細かいものを識別するなど、「見たいところを見る」機能を担っています。 ここが傷むと、中心がゆがむ・欠けるといった症状が現れます。
眼軸長との関係
眼軸長が長くなるほど、近視性黄斑症のリスクが高まることが報告されています。 久山町研究(Hisayama Study)の解析では、眼軸長が1mm増えるごとにリスクが約2.94倍になるという関連が示されています (OR 2.94、95%CI 2.19–3.95)。
- 男性で眼軸長 25.9mm 以上、女性で 25.3mm 以上から特にリスクが高まるとされる
- 眼軸長 26.5mm 以上ではリスクがさらに上昇するとされている
- 脈絡膜(眼底の血管層)が薄いほど、より進行しやすい可能性も指摘されている
有病率・発生率
強度近視での有病率は13〜65%と報告によって幅があります。 久山町研究(日本人一般住民対象)では、5年間の新規発生率が1.1%(2,164人中24人)と報告されています。 また、近視性黄斑症の有病率は2005年から2017年にかけて増加傾向にあることも示されています (1.6%→3.0%→3.6%)。
ATN分類(国際分類システム)
2018年に提唱されたATN分類は、近視性黄斑症を3つの要素で評価します。
| 分類 | 内容 | 段階 |
|---|---|---|
| A(萎縮性変化) | 網脈絡膜の萎縮 | A0〜A4(豹紋状眼底〜黄斑萎縮) |
| T(牽引性変化) | 牽引による網膜変化 | T0〜T2(牽引なし〜黄斑剥離) |
| N(新生血管性変化) | 脈絡膜新生血管など | N0〜N2(変化なし〜CNV・フックスの黒色瘢痕) |
※ATN分類は眼科専門医が眼底写真・OCTをもとに評価します。
症状と気づくサイン
- 見たいところがゆがんで見える(変視症)
- 中心部がかすんだり、暗く感じる
- 文字が読みにくくなる
- まっすぐな線が波打って見える
症状の進み方はゆっくりであることが多く、気づきにくい場合もあります。 強度近視のある方は、定期的な眼底検査を受けることが重要とされています。
治療について
近視性黄斑症の変化の種類によって対応が異なります。脈絡膜新生血管(mCNV)が生じた場合には、 抗VEGF薬の硝子体内注射が標準的な治療とされています。 萎縮性変化そのものを元に戻す治療は現時点では確立されていません。 だからこそ、進行を予防する観点から近視進行抑制に取り組むことが重要とされています。
お子さまの近視の進行目安は予測ツールで試算できます。
参考文献
- Haarman AEG, Enthoven CA, Tideman JWL, et al. The Complications of Myopia: A Review and Meta-Analysis. Investigative Ophthalmology & Visual Science. 2020;61(4):49.
- Yasuda M, Miyake M, Yamashiro K, et al. Incidence and risk factors of myopic maculopathy in a general Japanese population: The Hisayama Study. Ophthalmology. 2021;128(3):463-471. [リンク]
- Yasuda M, Miyake M, Yamashiro K, et al. Choroidal thickness and risk of myopic maculopathy incidence and progression: The Hisayama Study. British Journal of Ophthalmology. 2024. [リンク]
- Ruiz-Medrano J, Montero JA, Flores-Moreno I, et al. Myopic maculopathy: Current status and proposal for a new classification and grading system (ATN). Progress in Retinal and Eye Research. 2019;69:80-115. [リンク]